Netflix『ダウンタイム』の手術シーンは、特殊メイク・特殊造形、手術用のダミー、VFX、医療監修を組み合わせて撮影されています。俳優の身体を実際に切っているわけではなく、メスを入れたり縫合したりできる造形を用意し、実写と自然につながるように仕上げています。
『えぞノオト』のマンマユートです。「あの手術はどうやって撮ったの?」という疑問について、2026年10月10日に確認した公式情報と監督・特殊メイク担当者・出演者のインタビューから整理しました。患者役の見た目や撮影方法には触れますが、事件の真相や物語の結末は扱いません。
『ダウンタイム』の手術撮影は本物?ダミーと特殊造形を使用
まず知りたいのは、メスが入る場面で何を撮っているのかですよね。特殊メイクを率いるAmazing JIROさんは、手術シーン用にダミーの顔や体を制作したと説明しています。切開や縫合が可能な造形を作り、手術の動作を映像として表現できるようにしていました。
ここで区別したいのが、俳優の肌に付けて外見を変える特殊メイクと、手術のために制作した顔・体のダミーです。どちらも人体を表現する技術ですが、撮影で担う役割が違います。患者が会話する場面と、手術部位を見せる場面を、同じ方法だけで作っているとは限りません。
Yuki Saito監督も、本当に切ることはできないため、Amazing JIROさんのチームと特殊造形のテストを重ねたと語っています。「リアルに見える」という印象には、見た目を似せるだけでなく、手術の動作に対応できる造形を準備する工程があるわけです。
CGだけで作った映像ではない?VFXの役割
『ダウンタイム』にはVFXも使われています。Netflixの公式スタッフ情報には、特殊メイク特殊造形ディレクションとしてAmazing JIROさん、VFXスーパーバイザーとして野﨑宏二さんの名前が掲載されています。実物の造形と映像処理の両方が制作に関わっています。
監督の説明では、VFXは特殊造形と実写の境目を自然になじませるためにも使用されています。手術部位を作っただけでは、俳優の姿や周囲の映像とうまくつながらない場合があります。そのつながりを整える仕事まで含めて、一つの手術シーンが成立しているんですね。
ただし、これだけで「血はすべてCG」「手元はすべてダミー」と各カットの作り方まで決めつけることはできません。今回参照した資料では、全ショットの加工内容を一覧にした説明までは確認できませんでした。公表されている制作方法と、映像からの推測は区別しておきたいところです。
| 制作上の要素 | 確認できる役割 |
|---|---|
| 特殊メイク | 俳優にパーツなどを施し、整形前後や回復途中の外見を表現 |
| 手術用の特殊造形 | 切開や縫合ができるダミーの顔・体を制作 |
| VFX | 特殊造形と実写の境目を自然になじませる処理など |
| 医療監修 | 手術風景や展開の確認、実際の手術資料を通じた制作支援 |
手術のリアリティを支える高須クリニックの監修
高須クリニックの公式ページでは、医師のチームと看護師が撮影現場で手術風景や展開を監修したことが紹介されています。2026年9月4日公開の、高須幹弥医師が出演する動画の案内です。造形の技術に加えて、医療現場を知る人の関与も確認できます。
監督は実際の手術写真を参考にし、二重切開の場面では液体や血が現れる順序まで研究したと説明しています。ここは医学的な一般論として広げるより、作品の制作過程として受け止めたい部分です。手術らしさを出すために、細かな変化までテストしていたことが分かります。
医療監修が付いていることは、画面に説得力を持たせる大切な要素です。ただ、ドラマの描写が、そのまま個々の手術の説明書になるわけではありません。この記事では医療の手順や適否ではなく、作品の映像がどのように作られたかに焦点を当てています。
景井ひなの特殊メイクは約4時間、撮影の5時間前に現場入り
かなぶん役の景井ひなさんは、出演者インタビューで、顔や胸の特殊メイクに約4時間、ヘアメイクに1時間かかったと明かしています。そのため、毎回撮影の5時間前に現場入りしていたそうです。この数字は景井さんの準備についての説明で、全出演者に共通する時間ではありません。
胸の表現には、肩からお腹あたりまでを覆って装着する造形が使われました。重さもあり、休憩中にはスタッフが用意した専用のクッションで支えていたといいます。衣装やカメラの角度だけで見た目を変えていたのではなく、身体に取り付ける大きな造形があったんですね。
また、芝居をしていない時間も、特殊メイクにしわが入ったり剥がれたりしないよう、なるべく動かないことを意識していたそうです。画面に出るのは完成した姿ですが、その状態を保ちながら撮影を待つ時間にも負担があったことが伝わります。
景井さんは、撮影前に顔をスキャンし、一人ひとりに合うパーツを作る準備にも言及しています。既製品を付けて終わりというより、その俳優の顔や役柄に合った外見を、事前の段階から設計する制作だったことがうかがえます。
天野はなの整形前後は、どちらも特殊メイク
田中善子役の天野はなさんは、整形後だけでなく整形前にも特殊メイクを施して出演しています。Amazing JIROさんによると、本人の顔のまま登場するシーンはなく、全シーンで特殊メイクを使用しました。「ビフォーが俳優の素顔、アフターが加工後」と考えると、ここを見落としてしまいます。
制作では先にアフターのイメージを考え、鼻や唇、顎などにパーツを加えて変化を表現しました。ビフォーは、その変化の幅が伝わるように逆の方向で設計されています。これは役柄の外見を作る演出であり、俳優本人の顔立ちに良し悪しを付ける話ではありません。
特殊メイクは基本的にパーツを足す技術なので、鼻を低くするなどの表現にも工夫が必要だったといいます。実際に削るのではなく、周囲の形や全体のバランスを変えて、引いたように見せる。整形前後の違いには、そうした造形上の発想も使われています。
研ナオコの変化には、引き上げとパーツの調整も
研ナオコさんが演じる坂下ゆり子の外見にも、複数の技術が使われています。Amazing JIROさんは、若返りの表現では、医療用テープで皮膚を引き上げた上から擬似皮膚のパーツを貼り付ける方法を試したと説明しています。パーツを加えるだけでは出しにくい変化への工夫です。
引き上げる力や方向によって顔の形が変わるため、その調整が難しかったそうです。研さんのアフターでは多くのパーツを用い、特殊メイクの時間は3時間を超えました。ビフォーでは特殊な素材でしわを加え、役の外見を作り分けています。
ここから分かるのは、手術中の迫力だけが特殊メイクの仕事ではないということです。施術前、回復途中、施術後という時間の変化を、同じ俳優の演技につながる形で表現する。その設計が、作品の美容医療の世界を支えています。
マンマユート私は、整形前の姿まで作り込んでいる点に、映像制作の奥深さを感じました
舞台裏を知ると、手術以外の場面にも目が向く
松岡茉優さんも、出演者対談でAmazing JIROさんの仕事に触れ、傷や腫れを表現する技術と仕上げの速さを評価しています。制作担当者の説明だけでなく、同じ現場にいた出演者の言葉からも、特殊メイクが作品にとって大きな存在だったことが伝わります。
『ダウンタイム』の手術撮影については、ダミーを用いた特殊造形、俳優の外見を変える特殊メイク、映像をつなぐVFX、医療監修という複数の仕事が確認できました。リアルな映像を一つの技術にまとめて説明するより、それぞれの役割を知るほうが、舞台裏を具体的に想像できます。
制作の工夫を楽しむなら、手術部位のアップに加えて、患者が会話している場面の顔や、回復途中の外見にも目を向けてみると面白そうです。公式情報や関係者のインタビューを手がかりにすると、「どう撮ったのだろう」という疑問から、演技と造形がつながる面白さへ一歩進めます。





